プロのコンサルタントの心得:経験

2019年9月22日

経験が大切です。理屈では人は動きません。そのように教えられました。

現場で経験を積むことで、実際の手順や作業を肌で感じ、感覚が身につきます。それを背景に実務の助言ができればいいですね。しかし、経験だけでは人が動くかどうか分かりません。もう一歩踏み込んで、その経験から何を学ぶかが大切です。経験したら、それを分析してみる。そして、その経験は何に活用できるのか、どのように活用できるのか、なぜ活用できるのかを考えてみると、経験がより有用なものになると思います。

経験のない人は諦めるしかないのか。そんなことはありません。皆さん、オギャーと生まれたときには、未経験じゃないですか。どんなエキスパートも習い始めは無知だったはずです。

すこし勇気が出ましたか?

昔、MCA(今のMHRA:英国の管轄当局)の職員と雑談したことがあります。その時にMCAの査察官の採用条件を話してくれました。FDAの査察官の話と比べてみると面白いですよ。経験と言ってもいろいろな経験があります。どちらが上かということは分かりません。分かるのは、どちらも世界で通用しているということです。

MCAの査察官になるには、製薬会社で10年ぐらいの実務経験が必要とのことでした。何年だったか正確な数字は覚えていません。雑談だったので、もしかしたら10年ぐらいみたいな話だったかもしれません。とにかく、製薬会社での実務経験の後でMCAの査察官になります。その後は、半年に1回ぐらいの割合で試験があるとのことでした。突然電話がかかってきて、口頭試問されると言っていました。

正式にMCA職員のことを調べたわけではなく、こんな会話だけでしたので、正確な情報ではありません。言いたいことは、製薬の実務経験の後で査察官になるということです。

私のGMPの先生は元FDA査察官です。彼から聞いたのですが、FDAは新卒を採用します。そこで、みっちりトレーニングをするそうです。3年ぐらいは製薬、食品、医療機器など、ローテーションを組んで回るそうです。その後自分の専門を選びます。それからも、先輩がついて教育するシステムがあるそうです。

FDAのホームページに出ていた記事があります。FDA査察官は薬を作った経験がないのに査察ができるのか、ということに応えた記事だったと記憶しています。FDAでは教育プログラムが充実していて、先輩について現場に行き、多くの企業の現場を査察を通して経験します。そして、過去のあらゆる情報が閲覧できるため、査察を行うという目的に関しては十分な能力を有することができると書かれていました。薬は作ったことはないけど、製薬の現場と査察のしかたは十分知っているということになります。

この2つの例から、経験がなくてもプロコンの先輩について現場を経験することで、必要な経験は得られます。あまり心配することはないですね。それよりも、学び、経験し、ものにする意欲が必要だと思いますよ。経験を通して何を学ぶかが大切です。